ハプティクスにおける重要な課題の一つに,肯定的な社会的インタラクションを促進するために人同士の触れ合いを設計することが挙げられる.このような触れ合いには常に相手が存在することから,物理的な刺激だけでなく社会的な刺激が知覚に与える影響を理解して設計する必要がある.本研究では,表情が触覚の知覚を及ぼす影響を示すことを目的とする.我々は,参加者がマウスを操作して目標のアイコンをクリックする際,画面上のエージェントがカーソルを逆方向に引っ張るように振る舞うヒューマン・エージェント・インタラクションシステムを設計した.本システムを用いてインタラクション中に知覚される力を心理物理学的な手法を用いて定量化した.実験の結果,エージェントの表情がネガティブなときに表情が中立的なときより知覚される力が有意に大きくなることが示された.また,知覚される力は各参加者の表情に対するの評価と相関すること,つまり,表情が不快または覚醒したと評価されるほど,より強い力が知覚されたことが示された.本結果は物理空間またはサイバースペースにおける触れ合いにおいて,表情がもたらす触覚への影響を示唆するものである. (IEEE Transactions on Haptics 2023)

主要論文5編

  1. Nana Matsuyama, Soichiro Matsuda, Taku Hachisu:
    Can Facial Expressions Induce Haptic Perception?,
    IEEE Transactions on Haptics, vol. 16, no. 4, pp. 634-639, 2023.
  2. 松山菜々,松田壮一郎,蜂須拓:
    エージェントの表情変化により生起する力覚の評価,
    日本バーチャルリアリティ学会論文誌,vol. 27,no. 4,pp. 283-290,2022.
  3. 松山菜々,松田壮一郎,蜂須拓:
    エージェントの表情により生起する触覚の評価のための表情設計に関する基礎検討,
    日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2023,XXX,愛知,2023/6/28-7/1.
  4. 松山菜々,松田壮一郎,蜂須拓:
    エージェントの表情により生起する力覚評価のための運動計測システムの予備検討,
    第27回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集,1C2-5,北海道,2022/9/12-14.
  5. 松山菜々,蜂須拓:
    エージェントの表情操作による疑似力覚提示手法の検討,
    日本バーチャルリアリティ学会ハプティクス研究会第27回研究会,pp. 7-10,オンライン開催,2021/11/29-30.

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  • IEEE World Haptics Conference 2023 / IEEE Transactions on Haptics